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美の道を往くオペラの世界へようこそ
森 和彦

森 和彦 もり かずひこ

県立岐阜高校時代に甲子園に出場し準優勝を獲得。 ‘50年、プロ野球「現オリックス・バッファローズ」に入団。‘54年「松下電器産業株式会社」に入社。要職を歴任し定年退職後、趣味を同じくする夫人とともにウィーンに渡り3ヶ月間のアパート生活において『第2の人生』のスタートを切る。帰国後、「音楽企画ドルチェ」に入社、チーフ・プロデューサーとして5年余り勤めた後、‘98年、長年の音楽鑑賞歴を活かして“人生と趣味”、“クラシック音楽へのアプローチ”、“オペラ、オペレッタの魅力と愉しみ方”等をテーマに講師や、講座の運営およびコンサートのMCを務め、『第3の人生』を実践中。また、1983年以来、夫婦で毎年のようにオーストリアを訪れ、ウィーンを中心にしたオペラ、オペレッタ、コンサートの鑑賞は200回を超え、歌手や演奏者の知己も多い。ウィーンに限らずオーストリア全体に魅せられ、すべての州を訪ね、宿泊地30ケ所、訪問地90ケ所に及ぶ。撮影した写真も1万枚以上、オーストリア政府観光局などの依頼をうけ、“魅力いっぱいのオーストリア、そしてウィーン”“ウィーンでの音楽の愉しみ方”などの講演も数多くおこなっている。

オペラ『トゥーランドット』に込められた荒川選手のメッセージとは

2006年冬季オリンピックトリノ大会直後、荒川静香選手のイナバウアーのブームとともに、彼女の用いた曲オペラ『トゥーランドット』のCDが店頭で完売、売り切れとなったことは記憶に新しいかと思います。荒川選手は大会直前に、金メダルをとるためにコーチ、演技、そして演曲を変えたと報じられました。そして最終的に選ばれた曲が『トゥーランドット』でした。

開幕式で、聖火点灯後現れた世界3大テノールの一人パヴァロッティが『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」を熱唱、世界中の人々を魅了していたとき、その選曲の偶然の一致に荒川さんは勝利を確信したと言われます。しかし荒川さんは単に偶然の一致を呼び込んだ強運の持ち主というだけではなかったのです。

実は荒川さんの金メダルにかける強い思いがこの『トゥーランドット』の歌の中に込められていました。荒川さんは、イタリア語の歌詞を熟知していたのでしょうね。「誰も寝てはならぬ」の美しい調べとともに荒川選手の演技が完璧に運ばれていきます。そしてクライマックスを迎えるとき、この名曲はこう歌いかけるのです。

【おゝ、夜よ消え去れ!星よ沈め! 夜が明けると私は勝つだろう!
                              私は勝利者になるだろう! 私は勝つのだ!】

彼女は、オペラ曲を通じて、自らの勝利を世界に宣言していたのではないかと思うのです。

「わかろう」とするよりも、まず「楽しむ」!

ウイーン国立劇場外観
わたしたち日本人はまずオペラと聞いたとき「なんだか難しそう」「なんとなくとっつきにくい」という印象を持つことが少なくありません。まじめな日本人の性質として「芸術」と接する際に、「わかる、わからない」で分類する傾向があるように感じます。まず、オペラは「わかる、わからない」よりも「楽しい、楽しくない」、「面白い、面白くない」でご覧になっていただきたいのです。わたしたちは学校の授業体験からか、『音楽』を『音学』と思い込んでいる節があるようです。もっと肩の力を抜いて、自然にあるがままに、文字通り『音楽』を楽しんでほしいと思います。

音楽、演劇、美術を総動員して作りあげられるオペラは「総合舞台芸術」といわれます。

音楽を中心に、物語としての文学的要素、劇構成や演技などの演劇的要素、そして舞台装置や衣装などの美術的要素、さらにバレエなどの舞踏的要素などが合体した「総合芸術」というわけです。しかし、物語の内容などは難しいものでなく、恋愛や不倫や殺人などがテーマであることが多く、どちらかというと俗っぽいかもしれません。

私たち夫婦の身近な例で言えば、二人で泣きたいときは「ラ・ボエーム」か「ロメオとジュリエット」と決めています(笑)。

「一番のおしゃれ」で楽しむ!

ウイーン国立劇場内
オペラの上演が日常的な欧米でも、オペラ観劇は特別なイヴェントです。映画『月の輝く夜に』でも、パン工場で働くロニ ー(ニコラス・ケイジ)からオペラに誘われた兄の婚約者のロレッタ(シェール)が髪を染めてドレスアップ。そして見違えるようなタキシード姿で現れたロニーと歌劇場前での出会いのシーンがそのことをよく表わしています。

日本国内はさておき、欧米でオペラを観るときは郷に入れば郷に従えです。劇場に、歌い演じる歌手やオーケストラ奏者に敬意を表すためにも、オペラにはきちんとした装いで臨みたいもの。男性ならダークスーツに蝶ネクタイ、格式ある劇場や音楽祭などには出来ればタキシードを着用。いちばんのお気に入りを着て、ドレスアップして出掛けられたら。“オペラを楽しむ”雰囲気を現地の人と共有するつもりで、お洒落を楽しんでください。かくいう私も、二十数年前細君に相談の上タキシードを購入。いまでも毎年ウィーンに旅立つときに持って行きます。

オペラの楽しみ方のいろいろ

オペラの楽しみ方の切り口には、「声」「歌」「オーケストラの演奏」の3つがあります。第一の魅力はなんといっても人間の美しい声です。鍛え上げられた歌手のみが発することができる、まさに「最高の楽器」と呼ぶにふさわしいものです。

次に歌。どんなオペラでも、必ずどこかで素敵な歌、メロディーが出てきます。おなじみの曲、お気に入りの曲が実はオペラの曲と知ったら、そのオペラに興味が沸くのは必然の成り行き。
最後にオーケストラの演奏。世界の一流オーケストラによる序曲、前奏曲、間奏曲などには魅せられてしまいます。
「アイーダ」
また何といっても、オペラの華は、アリア(器楽伴奏つきの劇的な独唱曲)といわれています。とかく「歌」というと華やかなソプラノやテノールに注目されそうですが、地味と思われるメゾソプラノ、アルト、そしてバリトン、バスといった音域にも数多くの名アリアが存在します。また、 アリアだけでなく重唱(二重唱から十四唱まで)、合唱も魅力的です。つまりオペラは「歌劇」なのです。

オペラへの扉を開いてみましょう!

「カルメン」
これからご覧になり始める方にはまずオペラのABCというものがあります。Aは『アイーダ』、Bは『ラ・ボエーム』、Cは『カルメン』です。また『フィガロの結婚』や『椿姫』も見どころ・聴きどころが満載です。お子様とご一緒なら『魔笛』がおすすめです。

はじめてのオペラを楽しむには、あらかじめあらすじと主な登場人物だけは知っておくとよいでしょう。
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