


 「はい、次はジャンプしながら歌いましょう。腹筋がつくと、いっぱい食べてもお腹がぽっこり出なくなりますよ。さあ、頑張りましょう!」
生徒さんたちから、弾けるような笑い声が起こります。指導をしているのは、独自のセオリーで「リズムボイストレーニング」というジャンルを確立した野本麻紀子さまです。
プロを目指すボーカリストだけでなく、一般の方も美容と健康を目的としたエクササイズとして楽しめるのが、リズムボイストレーニングの特徴です。リズム感と発声法を同時に鍛えることで、正しい姿勢と発声を身につけ、ボディラインもすっきりととのえていきます。
ふだんは意識しない腹筋に手を触れながらたっぷりと声を出し、横になって脚を上げたり、ジャンプしたり。最後はジャズをBGMにクールダウン。ゆったりとした充実感に包まれるひとときです。
「歌は好きだけど、表舞台は苦手だから」と、幼い頃からボイストレーナーに憧れていたという野本さま。具体的な方法がわからないまま、わずか10歳で大物作曲家への弟子入りを果たします。
「町のカラオケ大会に出て、運よく声をかけていただいたんですよ(笑)。でも歌手を目指していたわけではなかったので、あくまでもトレーナーになるための手段だったんです」
憧れの音楽業界でさまざまなジャンルのプロと知り合う日々。やがて高校生になり、世界的に活躍するトレーナーにレッスンを受けてから、野本さまの夢は大きく飛躍します。
「自分自身がレッスンを受けてわかったことは、リズム感がないと言われる日本人ならではのトレーニングが必要だということでした。自分の経験から、その方法論を少しずつ積み重ねていったんです」
19歳からはいよいよプロのトレーナーとして活動を始め、22歳でリズムボイストレーニングを確立。音楽専門学校などでプロを目指す方を対象とした授業を進める一方で、現在のように一般の方向けのプログラムも手がけるようになりました。
「人生って限りがありますよね。だからこそ、普通の毎日を大切にしたいんです」
笑いの絶えないトレーニング中と同じ穏やかな表情で、さらりとこんなことをおっしゃる野本さま。15歳で阪神大震災に遭い、19歳で大病を患ったという経験のある野本さまならではの言葉です。
「毎日、だんな様が出かけるときや子どもを保育園に預けるときは、必ず笑顔で見送るようにしてます。たとえ夫婦喧嘩していても(笑)、それだけは常に意識してるんです」
大切なご家族。そして幼い頃からの夢を叶えたお仕事。その両立のコツを尋ねると、「できないことは人にお願いして、その代わりに自分も相手を精一杯支えていくこと」という温かい答えが返ってきました。
トレーニングを通じてより多くの人を輝かせ、自分自身も輝いていくことが夢と語る野本さま。まるで歌うように、軽やかに生き方を語ってくださったその声は、これからもたくさんの人たちにドラマティックな変化をもたらしてくれそうです。 |